【成分表連載44】果実飲料をうまくとり入れましょう~気になる糖類の計算アイデア付き~ 

渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長

わたなべともこ東京栄養食糧専門学校校長。医学博士。千葉県立衛生短期大学、千葉県立保健医療大学、淑徳大学を経て現職。千葉県立保健医療大学名誉教授、千葉県学校保健学会理事長、産業栄養指導者会会長。文部科学省による日本食品標準成分表の策定に食品成分委員会委員等として30年にわたり携わり、成分表活用の研究・提言を行なう。千葉県食育推進県民協議会委員として千葉県の食育ツール(グー・パー食生活ガイドブック等)の開発・普及も行なっている。『八訂食品成分表2024』本表監修(女子栄養大学出版部)。著書に『これだけは知っておきたい!「食品成分表」と「栄養計算」のきほん』(講談社)ほか。

9月になりましたが、まだ暑さが続いています。皆さん、夏バテなどされていませんか?

食欲がない場合でも、果実ジュースや野菜ジュースの鮮やかな色彩や香りが食欲をそそる場合があります。橙色、黄色、紫色、黄緑色の甘い飲み物は、食卓を華やかにし、楽しい気持ちにします。

今回は、「果実飲料」の名称で成分表に収載されている、果実(果物)のジュースについてご紹介します。

1)食品成分表に収載されている「果実飲料」のタイプいろいろ

成分表の果実類の果実飲料は、表1の名称に記してある種類が収載されています。
原料の果実により、収載されている種類は異なっています(表2参照)。
なお、以前より種類が増え名称が変わっている経緯があるので、わかるように説明を記しました。

表1 果実類に収載されている果実飲料

2)果実飲料の名称は日本農林規格(JAS)に基づく

果実飲料の分類はJASで定められています。JASでは、濃縮果汁、果実ジュース、果実ミックスジュース、果粒入り果実ジュース、果実・野菜ミックスジュースおよび果汁入り飲料に大別されています。

果汁またはジュースと称するものは果実や野菜が100%のものです。果汁の含有量が10~100%未満のものは果汁入り飲料です。

また、平成10年8月からは、表示が次のように定められました。成分表の名称は、原則としてJASに基づく名称になっています。

①ストレート(天然)と濃縮還元(濃縮果汁)を精製した水で濃縮前の100%果汁にしたものの区別の明示

②糖類を加えたことを明示

③果汁入り飲料では,果汁の含有量を食品に加える。例えば、ぶどう果汁30%入り飲料など

3)果実類の果実飲料はビタミンがとれる 

成分表2020(八訂)では市販品の果実飲料が32食品も収載されています。

見づらいかとは思いますが、表2に、エネルギー、利用可能炭水化物、糖類に加え、カリウム、カルシウム、ビタミンA(レチノール活性当量)、葉酸、ビタミンCを示しました。ストレートおよび濃縮還元ジュースは色地を敷きました。果実飲料が原料果実に由来する無機質やビタミンを含有することがわかります。

表2 果実飲料の主要な成分

アセロラのように、果実飲料が1食品しか収載されていない食品や、うんしゅうみかんのように果実飲料が5食品も収載されている食品があります。

うんしゅうみかんのように、多数の果実飲料が収載されている食品を見てみましょう。ストレートジュースや濃縮還元ジュースは、他の果実飲料に比べ無機質やビタミンを多く含有していることがわかります。

各成分の中央値を見ると、糖類は利用可能炭水化物の86%の値です。また、ジュースを200mL 摂取すると、およそ92kcal、糖類を19.8g摂取することがわかります。

糖類は炭水化物成分表への収載がないため未収載の食品があります。そこで、糖類が不明の果実類のジュースは、利用可能炭水化物値に0.86を乗じて、糖類の値とすることも一考です。

甘い飲料を飲む場合は、果実飲料を飲むと、原料果実の含まれる無機質やビタミンを摂取でき、栄養成分的にはお得です。

4)製品の栄養成分表示を優先しよう

果実飲料を購入する場合は、おいしさや価格のほかに栄養成分表示も商品選択の要素の1つにしましょう。栄養成分表示は、購入店舗での商品の表示をみることや、お店の方に聞いてみる(教えてもらう)ことで知ることができます。また、あらかじめインターネット検索などで商品の栄養成分表示を調べておくと、各製品について時間をかけて比較検討できます。

栄養計算は、購入した商品の栄養成分表示の値を用い、表示されていない成分は成分表の値を使うとよいでしょう。特に果実飲料は、酸化防止用(抗酸化用)等のため、L-アスコルビン酸(還元型ビタミンC) 等を添加している場合もあり、その添加量は製品により著しく異なっています。表示を優先するのがよいでしょう。

5)果実飲料は料理にも使える

果実飲料は、そのまま飲用にするだけでなくゼラチンなどでかためてゼリーにしたり、そのまま冷凍庫で固めてシャーベットにするなど、涼しさを口腔内で継続して感じさせる料理にすることもできます。

成分表の菓子類に収載されているオレンジゼリーは、バレンシアオレンジジュース(濃縮還元)300、砂糖(上白糖)30、粉ゼラチン5で作ったものです。一度試作して味を確認してみると、市販品の計算の判断などにも役立ちますよ。

食欲がないときなど果実飲料を上手に活用したいものですね。