渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長
和食文化ブックレット10巻の概要を見てみましょう。
1.『和食とは何か』:熊倉功夫(国立民族学博物館名誉教授)・江原絢子(東京家政学院大学名誉教授)著では,「自然と異文化の融合」や「持続可能な資源の利用」「器と季節」「健康的な食生活」等、和食文化の基本的なキーワードを解説し、「和食とは何か」を明らかにしています。さらに、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるまでの経緯と、今後の保護継承を見通した提言がされています。
2.『年中行事としきたり』:中村羊一郞(民俗学者)著では,和食は,自然への畏敬と感謝の気持ちを持って食べる食事であり、同じ食べ物を皆が食べることで、地域社会全体が結びつくという大きな意義を持っています。このことを、年中行事と、人の一生の節目ごとに行われるお祝い事を中心に、具体的に記載しています。
3.『おもてなしとマナー』:後藤加寿子(料理研究家)・熊倉功夫 著では,家庭でのおもてなしとマナーを中心に、相手の立場になって考えることや季節感を大事にするというおもてなしの真髄や具体例、食べ方のマナーや箸の使い方などを記述しています
4.『和食と健康』:渡邊智子(千葉県立保健医療大学教授)・都築毅(東北大学大学院准教授)著では,日本人は寿命が長く、その理由は食生活(特に食事)にあると言われています。和食はなぜ健康によいのかの秘密を探り、和食と健康について考え、和食を取り入れた健康的な食生活を提案しています。
5.『和食の歴史』:原田信男(国士舘大学教授)著では,和食の形成,和食の完成と展開,和食の発達,和食の新展開,和食の特色と将来について記述しています。
6.『食材と調理』:大久保洋子(元実践女子大学教授)・中澤弥子(長野県短期大学教授)著では,食の根幹である食材とその調理について考え、「自分でつくる」食事を提案しています。
7.『うま味の秘密』:伏木亨(龍谷大学教授)では,うま味の科学的な正体や、我々がどうしてうま味を感じるのか、うま味を使った食材、学校でのうま味教育などについて解説しています。
8.『ふるさとの食べもの』:今田節子(ノートルダム清心女子大学名誉教授)・清絢(京都光華女子大学真宗文化研究所研究員)著では,各地に根づいたふるさとの食べもの,全国に広がるさまざまな和食(郷土料理)は、どこが違ってなにが同じなのか。どのように現代に息づいているのかを記述しています。
9.『和菓子と日本茶』:藪光生(全国和菓子協会専務理事)・中村順行(静岡県立大学教授)著では,上古から存在する和菓子と、和食の体系に影響を与えた日本茶について,歴史・文化・栄養等について記述しています。
10.『和食と日本酒』:増田德兵衞(日本酒造組合中央会監事)著では,日本を代表する民俗酒である日本酒(國酒(こくしゅ))の地域性、製造の工程、料理と酒の組み合わせ、日本酒の楽しみ方や効用を解説しています。
10巻のタイトルと概要をみると,無形文化遺産に登録された「和食 日本人の伝統的な食文化」がイメージできるのではないでしょうか。興味をもった書籍からゆっくりご覧いただくと「和食 日本人の伝統的な食文化」について,新たな発見があるのではないでしょうか。