【成分表連載49】「食塩相当量」は減ってきた!? 食品成分表の「しょうゆ類」の変遷

5)成分表2015(七訂)では「減塩しょうゆ こいくち」が新規収載!

「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」(平成27(2015)年公表)では、四訂成分表、五訂成分表および成分表2010に収載されていた5食品に加え、「減塩しょうゆ こいくち」が減塩しょうゆとして初めて収載されました。さらに、「だししょうゆ」、「照りしょうゆ」も追加されています。

「減塩しょうゆ」とは

通常のしょうゆを製造後、食塩だけを特殊な方法で取り除き、旨味、香り等、他の成分はそのまま残して作るしょうゆ。

「だししょうゆ」とは

市販のしょうゆにだしを加えうまみによる減塩を目的とした調味料。しょうゆやだしの種類と配合割合により成分量が異なる。収載食品は、「こいくちしょうゆ」1:「かつお・昆布だし」1の割合で作ったもの。

「照りしょうゆ」とは

魚等を照り焼きする時などに、照りを出すために塗るたれ。しょうゆに酒、砂糖、みりん等を加えたものがある。収載食品は、本みりんとこいくちしょうゆを合わせ加熱したものである。原材料配合割合は、本みりん126、こいくちしょうゆ45。

表4に「成分表2015(七訂)」で新規収載のしょうゆ3食品について、食品名と食塩相当量を示しました。成分表2015の「こいくちしょうゆ」 の食塩相当量に比べ、どのくらい減塩されているかを示しました。3食品とも「こいくちしょうゆ」に比べ、約1/2の食塩相当量です。

表4 成分表2015(七訂)で追加されたしょうゆ類の食塩相当量とこいくちしょうゆに比べての減塩率(100gあたり)

*減塩率(%)= 100 - しょうゆの食塩相当量 ÷ こいくちしょうゆの食塩相当量(14.5)g × 100

6)「成分表2020(増補2023、八訂)」:「うすくちしょうゆ 低塩」 も収載

「成分表2020(八訂)」では、しょうゆ類は「成分表2015(七訂)」の収載食品に加え、「うすくちしょうゆ 低塩」が追加されました(表5)。

「うすくちしょうゆ 低塩」とは

通常のうすくちしょうゆに比べて、食塩相当量が80 %以下のもので、食品表示法の規定に基づく表示があるもの。しょうゆの表示に関する公正競争規約では「低塩」のほかに、「うす塩」、「あさ塩」あるいは「あま塩」を規定している。成分表の収載値は、「低塩」と表示されている製品3点と「減塩」と表示されている製品1点を試料とした分析値に基づく値。ただし、ナトリウムは、「低塩」のみの成分値で推計した値。

「成分表2020(八訂)」では、「こいくちしょうゆ 減塩」は通常の「こいくちしょうゆ」に比べ43%の減塩「うすくちしょうゆ 低塩」は、通常のうすくちしょうゆに比べ20%の減塩の食品です。「うすくちしょうゆ」は減塩製品の流通量よりも、低塩の流通量が多いため,この食品の収載になっています。

なお、「うすくちしょうゆ」以外の収載食品(8食品)の食塩相当量は、成分表2015(五訂成分表および成分表2010も)と同じ値です。したがって、五訂成分表が公表された2000年~現在まで、常用されるしょうゆの食塩相当量は、この値であることがわかります。

表5 「成分表2020(八訂)」収載のしょうゆ(食塩相当量:100gあたり)

*こいくちしょうゆ 減塩:「成分表2015(七訂)」の「減塩しょうゆ こいくち」を名称変更したもの。成分値は算出方法の変更等により若干異なる栄養素があるもののほぼ同じ。

7)「しょうゆ」をどう栄養計算するか

● 通常のしょうゆ:利用する「しょうゆ」の食塩相当量を確認しましょう

通常のしょうゆの食塩相当量は、初版の成分表の18gからみると、「こいくちしょうゆ」で19%、「うすくちしょうゆ」で11%、「たまりしょうゆ」で28%、「さいしこみしょうゆ」で31%、「しろしょうゆ」で21%も減塩されています。そのため、「四訂成分表」や「五訂成分表」が公表された時点で、これまでと同じ量のしょうゆを料理に使っていた場合、自然に少しだけ減塩できていたといえます。

しょうゆの食塩相当量は、製品により成分表収載値と異なる場合もあるので、実際に利用する「しょうゆ」の食塩相当量を表示で確認し、それを栄養計算に使いましょう

● 減塩しょうゆ:多様な減塩しょうゆがあります 

「減塩しょうゆ」は、各社の努力により多様な製品が販売されています。たとえば、「こいくちしょうゆ」では、成分表の減塩しょうゆよりも減塩されている「食塩相当量50%カット」製品、「食塩相当量66%カット」製品も販売されています。しょうゆが調味料の主となる料理には、減塩のためにこれらのしょうゆを利用するのもよさそうです。

食塩を制限される食生活にならないためにも、日々の食生活で食塩の摂取量に留意することは重要です。おいしい味つけのまま、食塩の摂取量を減らすくふうを行なうために、減塩しょうゆをじょうずに活用しませんか。さまざまなしょうゆの情報を得て、試食する機会を利用し、色、香り、味や風味を観察し、どんな料理に利用するとよさそうかなどを考えてみませんか。使う場合には、栄養計算には、表示されている成分値を用いましょう。