渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長
しょうゆは、日本独自の調味料の1つです。しょうゆの原型は古代中国から伝わった「醤(ヂャン)」です。日本では「醤」と書き「ひしお」と読みました。これは、塩辛のような発酵食品で材料により「魚醤(うおびしお)」、「穀醤(こくびしお)」「肉醤(ししびしお)」などがありました。醤油の原型は「穀醤」です。今回は食品成分表の「しょうゆ」について食塩相当量の変遷から見てみましょう。
1)初版~改訂成分表:初版では2種類、改訂版では1種類のしょうゆ
1950(昭和25)年に公表された初版の「日本食品標準成分表」では豆類に所属しています(初版の成分表は16群で構成され調味料類は群がありませんでした。しょうゆは主材料になる食品が所属する食品群に所属していました)。
しょうゆは、「しょう油」と「アミノ酸しょう油」(小学館デジタル大辞泉によると「脱脂大豆などを化学的に分解したアミノ酸を主にしてつくった醤油。また、アミノ酸を加えた醤油。」)の2食品が豆類に収載されていました。どちらも、備考欄に「食塩18.0%」の記載があります。
「改訂日本食品標準成分表」[1954(昭和29)年公表]のしょうゆは、豆類に収載されている「しょうゆ」1食品だけです。備考欄には、「100cc中食塩18g」の記載があります。この成分表では、「調味品類,その他」が新食品群として追加されていますが、しょうゆは、初版と同様に豆類のままでした。この「しょうゆ」は初版と異なる収載値(脂質、糖質、灰分,ビタミンB1およびB2以外)なので、新たに分析した食品であると推察されます(表1)。
表1 初版成分表と改訂成分表のしょうゆ の主要な成分値(100g当たり)
『日本食品標準成分表』『改訂日本食品標準成分表』より。項目名や単位は出典の表記どおりにしました。
2)三訂成分表:「豆類」から「調味品類その他」へ移動。ナトリウムが成分項目に追加
1963(昭和38)年公表の「三訂日本食品標準成分表」は、ナトリウムが成分項目として追加された成分表です。しょうゆは、豆類から「調味品類その他」に移動し、「しょうゆ」1食品が収載されています。備考欄には、「食塩18.0%」の記載があります。改訂成分表と異なる収載値は、ビタミン類[ビタミンB1、B2、ニコチン酸(改訂成分表ではナイアシンと表記)]なので、ビタミン類の分析を新たに行ったと推察されます。
3)四訂成分表:しょうゆ類は「調味料および香辛料類」の5食品
「四訂日本食品標準成分表」[1982(昭和57)年公表]のしょうゆと食塩相当量を表2に示しました。
四訂成分表の第4章 1.改訂における食品群別留意点では、「三訂成分表では一括していた「しょうゆ」を日本農林規格の分類により、5種類に分類した」と記載されています。四訂成分表のしょうゆの食塩当量は、初版のしょうゆに比べ、すべての食品で少ない値になっています。
表2「四訂成分表」収載のしょうゆの食塩相当量(100gあたり)
*減塩率(%)=100-食塩相当量÷18g×100
4)五訂成分表・成分表2010・成分表2015(七訂)
五訂成分表では、四訂成分表および関係資料(財団法人日本醤油研究所資料)に基づき、ナトリウム量が改訂されそれに伴い食塩相当量も改訂されています(表3)。
四訂成分表に比べ、「さいしこみしょうゆ」以外は食塩相当量が低下しています(赤字)。
五訂成分表の収載値は、成分表2010および成分表2015(七訂)でも同じ値です。各成分表では策定にあたり、財団法人日本醤油研究所(現:一般財団法人日本醤油技術センター)に 現状を聞きとっているので、五訂成分表が公表された2000年から成分表2015 が公表されるまでの15年は、常用されるしょうゆの食塩相当量は、この値だったことがわかります。
表3 五訂成分表、成分表2010、成分表2015収載のしょうゆ(食塩相当量g/100gあたり)
*1 減塩率(%)=100-食塩相当量÷18g×100 *2 減塩率(%)=100-食塩相当量÷四訂成分表の収載値×100
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