渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長
「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」が公表されました!
栄養計算や栄養指導・アドバイスを行なうための成分表を、成分表2015(七訂)から成分表2020(八訂)へ変更したばかりなのに、どうすればよいのでしょう!?と、困惑されているかもしれません。
そこで、成分表増補2023について、その特徴と活用方法を提案します。
1 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の入手方法
「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(以下、成分表増補2023)」が、2023年4月28日に文部科学省(以下、文科省)のウェブサイトで公開されました。
この成分表は、「文科省のサイトのトップ > 科学技術・学術 > 生命倫理・安全等 > 日本食品標準成分表・資源に関する取組 > 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」で見ることができます。
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
このURLを開くと、図1の画面になります。成分表増補2023すなわち本表の増補版のほか、アミノ酸成分表編、脂肪酸成分表編および炭水化物成分表編の増補版もこの画面からダウンロードできます。
図1 成分表増補2023のトップ画面
2 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の特徴
成分表増補2023 の特徴は以下のとおりです。
①成分表2020(八訂)と、目的・性格、収載成分項目、エネルギー計算方法は同じです。
②成分表2020(八訂)公表のものから、収載食品、収載成分値を追加あるいは更新しています。追加や変更した成分値がある場合には、その成分の関連成分も再計算しています。たとえば、アミノ酸に変更があれば、アミノ酸組成によるたんぱく質も、エネルギー値も再計算しています。
3 食品群別収載食品数と新規収載食品
表1に、成分表2020(八訂)と増補2023の食品群別の収載食品数、および食品の増加数を示しました。
表2に、成分表増補2023の新規収載食品の食品名を、表3に成分表2020(八訂)収載食品のうち改訂された成分がある食品の食品名を記載しました。
表2および表3の食品の中に、献立作成や栄養指導等に頻出する食品があるかどうか確認しましょう。
表1 成分表2020(八訂)と成分表増補2023の食品群別収載食品数および増加食品数
表2 成分表増補2023の新規収載食品名
表3 成分表増補2023で改訂された成分がある食品
4 成分表増補2023の各食品の収載成分等(データ)を更新した内容と理由
増補2023のトップ画面(図1)の赤枠内(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年におけるデータ更新内容・理由)をクリックすると、図2の画面が開き、各成分表をクリックするとその成分表(Excel表)の画面になり、その詳細を見ることができます。
図2 図1の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年におけるデータ更新内容・理由をクリックし開いた画面
たとえば、「こむぎ(パン類)コッペパン」は6行に渡ってデータが収載されています(図3)。
1行目が全成分(増補2023の収載値)です。2~6行目で更新理由(赤枠)別にそれに対応する成分(収載値)が記載されています。これは成分表2020(八訂)では整理して提供されていなかった情報です。
図3 図2の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 収載値(案)・第2章(データ)更新内容・理由 (Excel:2.2MB) Excel」を開いた画面(一部抜粋)
この画面では判別しにくいかもしれませんが、コッペパンの2行目から6行目まで次のように更新理由が記されています。
①新規分析(未収載成分)
②新規分析(既収載成分)
③構成成分・計算要素の更新
④分析方法の変更
⑤その他
実際に画面を開いて確認してみてください。
5 成分表増補2023の実務での活用
本連載でお伝えしてきたように、文科省の成分表2020(八訂)は、栄養計算などの実務で利用するためには編集が必要です。そのため、給食施設や栄養士・管理栄養士養成施設では、書籍としての成分表は、女子栄養大学出版部の成分表など、使い勝手のよい編集を行なっている各出版社の成分表を利用している場合がほとんどです。また、栄養計算ソフトは、ソフト作成会社が販売しているものを利用している場合がほとんどです。
そのため、多くの給食施設では、区切りのよい来年あるいは来年度の食品成分表の発行を待っての利用になると考えられます。
そのような中ですが、可能であれば、献立作成や栄養指導等で頻出する食品については、収載値の変更があるかどうかを確認(表3を活用)し、変更があればその値を修正すること、新規収載食品(表2)で献立作成や栄養指導等に頻出する食品がある場合には、その食品を追加することを、おすすめします。臨床栄養に関わるユーザーには特にそのようにおすすめします。
一方、ご自分で食品成分表やソフトの編集を行なっている場合は、成分表増補2023のExcelデータを使ってそれを変更すれば、すぐに対応できます。
ユーザーにより栄養計算や栄養指導などで使う成分表は、しばらくの間、成分表2015(七訂)、成分表2020(八訂)、成分表増補2023が混在することになりそうです。
そこで、栄養計算や栄養指導では、どの成分表を用いたかを明記する必要があります。忘れずに記載しましょう!
機会を改めて、成分表増補2023の新規収載食品の留意点を記載します。
追記(2023年5月5日)
「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の公表について (mext.go.jp)の文章も公表されています。
【データ更新のポイント】として、食品を3区分に分けて記載しています。この区分で新食品をみると新規食品の内容が理解しやすくなりますので、ご紹介します(抜粋)。
なお、成分表増補2023は、WEBサイトのみの公表と明記されています。
データ更新のポイント
①新たな食品の追加 バンズ、絹厚揚げ、アイスプラント、堀川ごぼう、万願寺とうがらし、島にんじん、九条ねぎ、めねぎ、赤すぐり、にしまあじ開き干し(生、焼き)、アルゼンチンあかえび(生、 ゆで、焼き)、ジョウルミート(生、焼き)、ランチョンミート、うぐいすあん、スィートチョコレート、缶コーヒー、お好み焼き、かきフライ、とりから揚げ、春巻き 等 |
②新たな調理形態の追加 あずき(つぶし生あん)、だいずもやし(油いため)、りょくとうもやし(油いため)、 乾燥わかめ(水煮)、くろまぐろ 脂身(水煮、蒸し、電子レンジ調理、焼き、ソテー、天ぷら)、まだこ(蒸し、油いため、素揚げ)、ばらベーコン(ゆで、焼き、油いため) 等 |
③生産・流通実態に合わせ再分析・細分化した食品 コッペパン、水稲全かゆレトルト(玄米、精白米)、日本かぼちゃ、西洋かぼちゃ、キャベツカット(次亜塩素酸洗浄)、にんじんカット(次亜塩素酸洗浄)、シャインマスカッ ト、マッシュルームブラウン種、あまのり、えごのり、くろまぐろ(養殖(畜養))、ほんしゅうじか、番茶(茶葉)、ほうじ茶(茶葉) |